中国・漢代の司馬遷が著した『史記』は、黄帝を初めとする五帝から夏・殷・周の三代、秦、楚漢抗争期を経て前漢の武帝までの歴史を著述した全130巻という大著です。兵馬俑の発掘など数々の発見と研究よってその信憑性が明らかになり、改めて価値が見直されています。そして同時に、これらの発見は『史記』の記述からは知りえなかった世界を考古学上で明らかにしてきました。中国古代の世界の復元には考古学と『史記』が密接に関わっているのです。
本展覧会では、春秋・戦国時代から漢武帝までの約700年間に焦点を当て、司馬遷一族にとって激動の現代史といえる中国統一を果たした秦始皇帝から項羽、劉邦(漢・高祖)らの時代を中心に、『史記』と考古学の接点となる作品群を厳選しました。
『史記』を切り口に中国考古の本質に迫る展覧会は初の試みです。私達、日本人にとっても、文学、美術、映画など様々な分野で愛され親しまれてきた『史記』の世界が、始皇帝の彩色兵馬俑をはじめ、日本初出品となる貴重な考古遺物や大型シアター映像によって多角的にわかりやすく再現されます。
そして、『史記』の舞台の中心となった中国陝西省は、京都府と友好提携関係にあります。京都文化博物館も1994年の平安建都1200年記念事業「大唐長安展」開催をきっかけとして、陝西省歴史博物館と友好関係を結びました。今回の企画は、両府省及び両館の友好交流を記念するものであります。