フランスの国民的画家であり、日本でも永らく愛され続けてきたジョルジュ・ルオー(1871-1958)の展覧会を開催いたします。
ルオーはステンドグラス職人の徒弟となった後に、国立美術学校に入学し、象徴主義の画家ギュスターヴ・モローに師事して多大な影響を受けました。やがて力強い筆づかいと厚塗りを特徴とする独自の画風を確立し、キリスト教やサーカスのテーマを中心に精神性の高い作品を数多く残しています。
出光美術館のルオー・コレクションは、世界屈指の質と量を誇るものです。本展はその400点近いコレクションの中から、ルオーの個性を存分に味わうことのできる重厚な絵肌の油彩画とともに、初期の鮮烈な水彩画、そして比類なき深みに達した版画の傑作をそろえ、あわせて209点を展示いたします。ルオーの画業の中でも重要な位置をしめる連作油彩画「受難」64点や、人間の悲惨・傲慢・孤独の描写から、慈悲の心と平和への祈りへと導く感動的な連作版画「ミセレーレ」58点といった、珠玉のシリーズをまとめてご覧いただける貴重な機会となります。
本展によりルオーの造形の魅力を再発見していただき、その作品にこめられた真摯な思いを感じ取っていただければ幸いです。