アメリカのボストン美術館には世界最大級の浮世絵コレクションがあります。中でも「肉筆浮世絵」は、量産品である版画とちがい、ふだんその下図を手がける浮世絵師が特別の注文によって描いた、一品きりの貴重品です。ボストンの肉筆浮世絵約700点は、明治時代に来日したボストンの富豪ウイリアム・ビゲロー(1850~1926)の収集品を主体とし、1911年頃に美術館に寄贈されました。彼の遺志を尊重した美術館の決定でほとんどが門外不出とされ、最近まで十分な調査はおこなわれませんでした。1996年から始まった調査プロジェクトによって名品の新発見が相次ぎ、ようやくその全貌が明らかとなりました。
本展は幻のビゲロー・コレクションを中心に68件81点を精選した、第一級の肉筆浮世絵作品の里帰り展です。喜多川歌麿や葛飾北斎をはじめ、ほとんど日本初公開の作品を通して、江戸という成熟した都市の魅力を体験する絶好の機会となるでしょう。68件のうち54件が日本初公開。なかでも初公開の北斎8点はいずれも圧巻です。
この展覧会は下記の4部で構成されます。
1.江戸の四季
雪月花をめで、四季の風物を楽しんだ江戸人の暮らしぶりを紹介。
2. 浮世の華
吉原を筆頭とする遊里ではぐくまれた、独特のあでやかな文化。
3. 歌舞礼讃
江戸の大スターである歌舞伎役者を描いた姿絵や、芝居小屋の絵看板。
4. 古典への憧れ
有名な古典を当世風パロディとして置きかえた機知的な「見立て絵」。