江戸時代初期、庶民の中を巡りながら、膨大な神仏像を彫った円空。名古屋市・荒子観音所蔵の『浄海雑記』には、「佛像十二萬躰ヲ刻セリ」と記されています。実数はともかく夥しい数の像を彫ったことが想定され、現在、全国で確認されている円空仏は5,200余体ですが、現存数だけでもこれほど多くの神仏像を彫ったのは、歴史上において円空だけといえます。
円空仏は数が多いだけでなく、安置されている場所も1,200ヶ所以上を数えますが、このうちの約700ヶ所が民家や庶民が日常生活の中で接した小祀堂です。このことは円空がいかに広汎に庶民と接していたかの証でもあります。
円空は、時に優しく時には激しく、木っ端を神仏像に化身させていますが、本展では、膨大な円空仏の中から中・小仏を中心に、常に庶民とともに祈り慈愛の微笑みを刻み続けた円空の鮮烈な生涯を、新発見の7体や展覧会初出品の70余体はじめ、1688年(元禄元年)頃に旧細入村の加賀沢、蟹寺、猪谷、庵谷において造像した24体を加えた約160体によって紹介します。