ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ(1720-1778)はヴェネツィアで学んだ後1740年にローマにやってきます。そして2代にわたるローマ教皇の庇護の下、建築家、考古学者としての目を持ちながら1743年以降、精力的に《ローマの景観》、《ローマの古代遺跡の景観》、《パエストゥムの古代遺跡の景観》等の連作を制作してゆきます。彼の眼は単なる古代趣味や古代へのあこがれといった感傷的なものではありません。建築家として建築物や遺跡の構造を正確に分析し、そこに見出される調和のとれた力学構造から生まれる時間を超えた建築の美と生命の原則を解明し、そしてそれらが「景観」として成立するために必要な、「時間」という触媒による無機素材の有機的結合に愛情と賛嘆のまなざしを向けています。彼の関心は、人間世界の風景ではなく、人工的構造物が生み出す自律的景観に向けられているのです。今回は、西洋美術館が所蔵する作品の中から《ローマの景観》と《パエストゥムの古代遺跡の景観》を中心に40点ほどを展示いたします。18世紀イタリアの景観をこの機会にお楽しみ下さい。
○ 《モッレ橋》 1762年
○ 《サンタ・マリア・ディ・ロレート聖堂と
サンティッシモ・ノーメ・ディ・マリア聖堂》
1763年