この展覧会は、ドレスデンに居城を定めたザクセン選帝侯のコレクションを7つのセクションで見るものです。ドレスデンでは異国文化が愛され、様々な外国の美術が集められました。中でも、イタリア、フランス、オランダ、そしてトルコ、中国、日本の6つの国が重要でした。セクション1では、そうした異国文化の影響を見る前に、ドレスデンのコレクションの始まりが、美術作品ではなく科学計測機器であったことを概観します。16世紀後半に宮廷に設けられた「美術収集室」では、ザクセン選帝侯が愛した地球儀や天球儀、製図用具など、実際に使用された道具類が棚に並べられていました。
セクション2では、オスマン・トルコの美術とその影響を見ます。アウグスト強王の時代、ザクセン宮廷ではトルコ風の祝祭が執り行われるほどトルコ風が流行しました。
セクション3は、芸術の先進国イタリアです。ザクセン宮廷では特に、ヴェネツィアの風景画が多く購入されましたが、ドレスデンの風景画が望まれるようになると、カナレットの甥のベロットがドレスデンに招かれ、ヴェドゥータという流行の風景画様式でドレスデンの景観が多数描かれ居城を飾ります。
セクション4では、フランスの宮廷文化に焦点が合わせられています。アウグスト強王は、青年時代、華麗な宮廷文化に衝撃を受けドレスデンの居城をフランス風に改装すべく、祝祭や儀式、ファッションから家具に至るまであらゆることをフランス風に整えました。
セクション5は、中国と日本の工芸です。アウグスト強王は東洋の磁器に魅了され、薬剤師ベトガーに白磁の製作を命じました。東洋の磁器を集光鏡で熔かし成分を分析することで、ベトガーはヨーロッパ初の磁器製作に成功します。マイセン磁器は、ヨーロッパの宮廷の憧れの的となり、ザクセンの贈り物外交で絶大な効果を発揮しました。
セクション6では、オランダ絵画の巨匠レンブラントがドレスデンに及ぼした影響を見ます。
最後のセクション7は、ドイツ・ロマン主義の中心地としてのドレスデンです。ドレスデンは文化と芸術でドイツを代表する町となったのです。また、ダールが描いた《満月のドレスデン》には、イタリアのヴェドゥータの様式とオランダの写実的な描写の融合を見ることができこの一点に、ドレスデンのコレクションの特徴が映し出されていると言っても過言ではありません。