近代彫刻の父と称されるオーギュスト・ロダン(1840-1917)、今日ではマティスやドランなどの師としてその名を知られる画家ウジェーヌ・カリエール(1849-1906)。この展覧会はふたりの直接の交流を軸に、その表現を比較するとともに、根底に流れる感覚や思想の共通性を探ろうとするものです。ロダンとカリエールは、1880年頃に知り合って以来、カリエールが亡くなるまで、もっとも親しい友人として親交を深めます。交流のなかから、ふたりは彫刻と絵画という技法の違いを越え、人物やものの表面に見える形ではなく、その奥に潜む「内なる生命」を表現する者こそ、理想の芸術家であるという考えをもつようになります。このような考え方は、同時代の象徴主義の批評家や詩人たちに共感を与え、ふたりは一躍フランス象徴主義美術の中心に位置する存在となります。
今回の展覧会では、ロダンとカリエールの彫刻、絵画、素描、版画約140点を5つのセクションに分け、さまざまな角度からその関係性を読みといていきます。ロダンとカリエールのふたりに焦点を絞った展覧会は、世界的にみてもこれまで例がなく、フランス世紀末、象徴主義という枠組みでロダンとカリエールの作品をとらえ直す、またとない機会となることでしょう。この展覧会は東京で構成され、パリのオルセー美術館に巡回します。