ロバート・キャパはたくさんの子どもの写真を撮っています。様々な国、戦場、農村、都市の子どもたち。戦争の渦中にある子どもと、平和な日常にある子どもの表情は確かに違います。しかし誰もが、隠し切れない瑞々しい生命感に満ちています。
戦場―そこでは生と死がむき出しにされます。しかし、子どもの世界は、常に生命が跳躍しています。恐らくキャパという磁石の針は、この生命感を指し示しているのでしょう。キャパが写した子どもたちの中には彼の無垢さが投影されているようです。
ロバートの弟であるコーネル・キャパは戦場で死んだ兄の遺志を継ぎ、一つの家に二人の戦争のカメラマンは要らないから、自分は平和のカメラマンになる、と慈愛の営みへレンズを向けました。穏やかな人間、美しい風景・・・コーネルの写真はロバートの写真と合わせ鏡のようにして、複雑な人間の在り方を写し出します。
戦争と平和―対極にあるように見えるこの二つには、どちらも人間が生み出すものだという皮肉な共通点があります。慈愛の営みと暴力の営み―私たちは、この兄弟の写真を同時に視ることで、自らがどのような生き物なのかに思いをめぐらせます。
本展では、ロバート・キャパと新収蔵のコーネル・キャパの作品、計170点を同時に公開。二人の会話を中心に兄弟の展覧会が幕を開けます。