古代以来、時代ごとの大きな変化を経ながら現代まで保存伝承されてきた、日本の古い神社には高い文化的・学術的価値があり、日本文化研究の上からも重要な位置を占めています。
私たちは、神社を信仰や宗教という精神的な面で貴重な歴史的文化的施設とみると同時に、その立地や環境から環境保存機能や公園的機能、自然動植物園的機能、また建築構造物の維持の上では建築・工芸の技能保存伝承機能、豊富な収蔵品類からは美術館・博物館・資料館・図書館などの諸機能、伝統的な祭礼からは儀礼や芸能の保存伝承機能、さらには観光資源としての機能など、きわめて多面的な機能を有する豊かな文化的有機的な構造物とみる視点に立って、共同研究を試みてきました。
今回の企画展示では、日本の古い神社のうち、とくに四つの神社に注目してみました。まず、神社の始原について考えてみたいと思い、出雲大社を中心とした出雲世界の紹介をします。次に、神社の有する建築、美術工芸に関する技能の保存伝承機能に注目して、厳島神社の歴史と伊勢神宮のご神宝の世界を紹介します。そして、古代より貴族から庶民に至るまで幅広い神仏習合の信仰と華麗な都市祭礼の歴史を伝える祇園八坂神社と祇園祭の紹介をします。