東京都写真美術館では、毎年開催して参りました重点収集作家個展の一環として、 植田正治の活動を振り返る写真展を開催いたします。鳥取県に生まれた植田正治は、1930年代から晩年に至るまで、 モダンな感覚にあふれた独特な表現をもって、日本の写真界でユニークな活動を展開するだけではなく、 ヨーロッパやアメリカにおいても高い評価を受けてまいりました。 本展は植田正治の没後、日本初の回顧展となります。戦前期の作品「裏町」から1950年代を代表する「砂丘」シリーズや 「童暦」シリーズ、そして1970年代、再評価の機運の中で撮影された「小さい伝記」や「風景の光景」など、 「植田調(UEDA-CHO)」と称された代表的な作品群に加え、ヨーロッパ取材時の作品やカラー写真による 「静物」シリーズなども紹介し、初期から晩年に至るまでの植田正治の写真世界を一望しながら、その表現の独自性を探ります。 植田正治という稀有な才能によって切り開かれた、私たちが思いもよらない「写真」の面白くも豊かな世界。 それは常に“写真する”ことの楽しさを追求し続けた写真家としての軌跡であり、 私たちに投げかけるメッセージでもあるのではないでしょうか。